『セピア色の謎解きはビスケットと忘れじの記憶』が出版されてちょうど1ヶ月ですね。
過去解決編、いかがでしたか?
まだ読んでいない方もいると思いますので、今日はネタバレしない程度に今回の前後編について書きたいと思います。
初めて〈頭の良くなる薬〉に触れたのは3巻。
5巻で危険ドラッグ絡みの事件を描き、8巻の『コーヒーに溶けるセピア色の謎解き』で、ようやく悠貴の最初の事件を語ることができました。
段階を踏んで掘りさげていったのは、過去編がシリーズで一番暗く重い話になるとわかっていたからです。
書くのも辛いぞ……、と覚悟して原稿に挑んだのですが、書いてみるとやっぱり辛くて(笑)
読んだ方にも辛い思いをさせてしまったかもしれません。
こんなにも暗く重苦しいのは内容のせいだと思っていたのですが、読み返してみるとそれだけではなかったことに気がつきました。
過去編は悠貴の心に触れる物語でもあります。
8巻の『コーヒーに溶けるセピア色の謎解き(ええい、長い……!)』は悠貴目線で書いたのですが、悠貴の目で見る世界は、よそよそしく、まわりが敵のように感じられます。
状況や人を観察して、誰からも距離をおく……そんな悠貴の心が物語の雰囲気まで変えたように思います。
面白いもので、地の文まで論理的な言いまわしが多く、淡々とした書き方になっていました。
じつは以前、シリーズを読んでくれた方から、
「美久ちゃんはお世辞にも頭がよくないし失敗ばかりだけど、美久ちゃんの目線で語られるから物語があたたかいのね」
と言っていただいたことがあります。
そのときはピンと来なかったけど、なるほどな、と今になって納得です。
美久の目に映る世界は、きらきらしていて。明るくて、あたたかくて、まあるいです。
当たり前のようにそうしていましたが、美久の目線がそのままシリーズのカラーになっていたんですね。
そんな美久の存在が、事件を乗り越えた悠貴の目にどんなふうに映るのか。
これから二人の関係を描くときの楽しみが増えました。
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写真は数年前に北海道に遊びにいったときのもの。
友だちに連れて行ってもらった、拓真館です。
しばらく旅行に出られていないので、どこかへ行きたい……。
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