台湾版『オーダーは探偵に』とちょっと出版業界の裏話

by - 木曜日, 12月 13, 2018


台湾版がぞくぞく刊行されました!
今回は気になる記述を見つけたので、日本の出版業界の話をまじえつつ、紹介したいと思います。

まずは台湾版。
4巻で帯の色が変わってしまった……さみしい。
これはこれでかわいいですね。

立てておいてある、ちょっと小さな本がオリジナルの日本語版です。

おかざきおかさんのイラストをこのサイズで楽しめる台湾の方が、とてもうらやましい。


ところで、日本で出版される海外文学には「翻訳者あとがき」というものがあります。
翻訳者さんが、訳した作品についてあとがきを書いてくれるシステムですね。
台湾語版はどうなっているかといいますと、

翻訳者あとがきはありませんでした……。

残念。

代わりに、私のあとがきがありました!


ジーザス!
私のたわごとが翻訳されてる!!

「ブレザーと詰め襟、どっちが王子ぽい?」とか、作者の愚行がだだもれです。
世界に向けて発信されると知ってたら、もっと気の利いたことを書いたのに……!


ちなみに前の記事で、

「登場人物の名前をひらがなにしたら、中国の漢字をあててもらえたのかな?」

と書いたのですが。
なんと、「ひらがな」はそのままでした!


1番左の行、「おかざきおか」さんの表記があります。びっくりです。
ひらがなはそのまま伝わるんですね。

そして 〈老師〉という表記が非常に興味深いのです!


オリジナルのあとがきは、「おかざきおかさん」「担当編集者の三木さん」となってます。
台湾版はどうなったかというと、

(日本)おかざきおかさん→ (台湾)おかざきおか老師
(日本)三木さん→ (台湾)三木先生

と、訳されました。

たしか〈老師〉は中国語で先生の意味だったと記憶してます。
中国語の〈先生〉は、目上の男性に使う敬称かな?


ちょっとややこしいですが、台湾語版を日本語に訳すと、

(台湾)おかざきおか老師→ (日本)おかざきおか先生

という意味になります。

オリジナルでは「さん」付けだったものが、「先生」に変化してるんですね。
おもしろい!!

* * *

ちょっと出版業界の裏話になりますが、

私は担当編集さんや小説家さんたちから「近江さん」と呼ばれます。

思い出してみると、小説のお仕事関係では、たいてい「近江さん」です。
「近江先生」と呼ばれることもありますが、そう呼ぶのは、少し距離のある関係の方のイメージです。
出版社が違っても、編集者さんからは「さん」付けで呼ばれるケースが多いので、出版業界は「さん」がメジャーなんだと思ってました。

一方、『オーダーは探偵に』がコミカライズしたとき、コミックの担当編集者さんに「近江先生」と呼ばれ、とても驚きました。

イラストレーターさんやマンガ家さんもお互い「さん」付けではなく、「先生」と呼ぶかたが多い印象です。

twitterとかでも○○先生って見かけますよね。
小説業界は「さん」付けが多くて、
マンガ業界では慣例的に著者を「先生」と呼ぶのかな~?と想像です。
そういえば、イラストレーターさんたちからは、ほぼ「近江先生」と呼ばれてました。


話を戻して、台湾版のあとがき。
こうして考えると、
イラストレーターや漫画家さんを〈老師〉と呼ぶのは日本文化の影響なのでしょうか?

もし、絵と一緒に敬称も伝わっているとしたら、おもしろいですよね。
どなたか詳しいかた、いないかなあ。

台湾ではクリエーターはみんな〈老師〉と呼ばれるのでしょうか?
もしかして、小説家も〈老師〉?
気になる台湾!!

こういうとき、翻訳は言葉を移しかえるのではなく、文化を訳する作業なんだなあ、としみじみします。

翻訳の世界ってすごく奥深いです。

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