『オーダーは探偵に』のはじまり

by - 木曜日, 4月 14, 2016


「メディアワークス文庫で書いてみませんか?」

担当さんにそう言われた当時、メディアワークス文庫と似たレーベルはなく、「キャラ文芸」という言葉もありませんでした。
まだまだ新しく、未知のジャンルです。
なんか新しいことができそう! とワクワクしたのを覚えています。

どんな作品がいいか担当さんと相談しつつ、生の意見を求めて友人に話を聞いてみることにしました。
さっそく本好きの友人に、どういう作品が読みたい? と尋ねると、
「なんでも読む!」
「長い話がいいよ」
「豆腐みたいな厚さの本って萌えるよね!」

なるほど。話を聞く相手を間違えました!
豆腐って! これだから活字中毒は困ります。

もうちょっと一般的な意見がほしかったので、話を聞く範囲を知人にまで広げました。
それで気づいたのですが、小説を読む人ってあまりいないんですね。
本は読んでもビジネス書やマンガだったり、前は小説を読んでいた人も忙しくてその習慣自体なくなっていたり。

「学校や仕事が忙しくてゆっくり小説を読む時間がない」
「小説を読むのってめんどくさい」
「文字を追うのって意外と大変で疲れる」

そんな意見もずいぶんありました。
ドラマや映画、アニメにネット、とたくさん娯楽コンテンツのある世の中で、わざわざ小説を選ぶ人のほうが少ないのかもしれません。
本当に疲れているとき文字を読む気力がなくなる気持ちは私にも覚えがあります。

それなら、通学や通勤のあいだに読める、明るくて楽しい話を書こう! と思いました。

『面倒くさい』『時間がない』ということは、裏を返せば『手軽』で『さくっと』読める小説なら楽しめるかもしれない、ということです。

小説から遠ざかってしまった人も、もともと読む習慣がない人にも、まずは「小説って面白い」と感じるきっかけになれば、と思いました。

目指したのは、ふだんは小説を読まない人が手に取れるような、マンガみたいに気軽な作品です。

そうして書き始めたのが『オーダーは探偵に 謎解き薫る喫茶店』でした。

「いつもはマンガしか読まないけど」
「小説は読むのが大変だけど」

そんな前置きのついたお手紙をいただくたびに、今も小さくガッツポーズしています。




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