ドイツの本事情

by - 土曜日, 4月 30, 2016



オーダーは探偵にのミニコラム①で本の厚さに触れたので、そのお話をもう少し。
短編やショートストーリーも好きですが、お気に入りの作家やシリーズもののページ数が多いと、楽しい時間が増えてうれしいですよね。私のまわりにいる小説好きはその気持ちが高じすぎたのか、「分厚ければ分厚いほど幸せ」という人が少なくありません。
300ページくらいじゃ読んだ気がしない。レンガみたいな厚さの本がいい、むしろブロックがいい!

ん、建築資材の話してる?
そんなふうに聞こえるほど、分厚い本が好きなのです。

厚い本が好きなのは個人の趣向ですが、ハリーポッターが出版されたとき、日本の児童書はちょっとした「分厚い本」ブームが起きていたように思います。
『エラゴン』『バーティミアス』『ネシャン・サーガ』『サブリエル』などなど。物語の面白さはもちろんですが、こんな分厚い本を読めた!という達成感もあって、それこそブロックのような厚さのハードカバーがたくさん出版されました。
そうした分厚い本はいつのまにか書店から姿を消し、今では児童書でファンタジーの棚自体見かけなくなってしまいましたが……。
ブームは冷めるものです。継続的に分厚い本を読み続けるのは、やはり本好きくらいでしょう。

と、思ったら。

いました、分厚い本を愛するが。いえ、国民が。

そう、ドイツ人です!!


『雨ときどき、編集者』を書くにあたっていろいろ調べてわかったのですが、
まず、ドイツの本はページ数がおかしい。
たとえば今日現在Amazon.deでもっとも売れている本のページ数をあげると、1位は政治と歴史の単行本で576ページ、2位は法律関係のポケットブックで912ページでした。
この本この本です)
政治や法律の本が上位を占めるあたり大変ドイツらしいのですが、こんなに厚いなら分割して出版しようと思わないところにも非常にドイツらしさを感じます。
小説でもこの傾向は顕著です。
日本だと2冊に分けそうなところを1冊で出したり、またある小説は1ページあたりの行数と文字数を通常より減らしてカサ増しするという荒技までやってのけます。読者も読者で、「本が薄いから」とアマゾンレビューで☆を減られているものもありました。
『厚い本=良い本』 というイメージがあるのかも?
しかも紙が日本のものと違って、少し厚ぼったくてさらにカサがでます。
見た目のわりに重くないですが、インクのせいか紙のせいか、なんともいえない不思議な香りが(笑)


どうしてそこまで厚い本を愛するのかドイツの事情に詳しい人に伺うと、
ドイツ人はバケーションが長いから分厚い本を持って行くんだよ、と教えてくれました。
長い休暇を利用して旅先で家や部屋を借り、そこで本を読むそうです。ひとところに長期留まるので、日中は観光、夜はのんびり読書、というわけです。 
なるほど。休暇の長さと本の厚さが比例していると思うと面白いですね。

物語の世界観をじっくり読み解き、登場人物の心の機微を丁寧に感じられるのがいい、という意見も聞きました。このへんは理論や分析を得意とする国民性というか教育に由来するものでしょうか。 なるほどなあ。

そして。それなりに納得してそんな疑問を持っていたさえ忘れたある日のこと。
ドイツ人の友だちと話していて、話題が小説のことになりました。
「ドイツの本って本当に分厚いよね」
「そりゃ厚いほうがいいよ。本体価格をページ数で割ったら、厚いほうがお買い得だからね! 素晴らしい!」

お買い得。

な る ほ ど ね !

優雅な休暇の過ごし方とか、内面世界を楽しむ読書方法とかより、ものすごくしっくりきました(笑)

そんなドイツでは今日もブロックのように分厚い本が愛されています。



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