なぜ『オーダーは探偵に』の作者は〝諸事情あって明かせません☺〟になったのか

by - 金曜日, 9月 27, 2019


写真に秘密があります。答えは本文の下へどうぞ!

『この物語には〝秘密〟があります。
真実に行き着かれましても、これから作品を読む方と世界のため、ネタバレなさいませんようご協力お願いいたします――』

そんな序文で始まる、
『死に戻り勇者は魔王を倒せない ~セーブポイントのご利用は計画的に~』(以下、『死に勇』)カクヨム版が無事、完結しました。

まずは『死に勇』を読み終えたみなさま、
〝秘密〟を守ってくださって、ありがとうございます!


コメントしにくい作品ですが、感想が聞きたくてうずうずしています。
ああ、でも何を聞いてもネタバレになってしまう…!
つらい…!!

書籍は10月17日発売です。
どうぞよろしく!

さてさて、なぜ〝近江泉美〟は〝諸事情あって明かせません☺〟になったのか?
本記事はあとがきにかえて、そのお話をしたいと思います。

* * *


私の気持ちは、はじめから固まっていました。


この作品は〝著者不明〟でいきたい! と。


うん、「なに言ってるの?」と声が聞こえるようですね(笑)

とにもかくにも、完成した原稿を預けるとき担当編集者さんに、
「作者は〝著者不詳〟にしたいんです!」
と強くお願いしました。

それにしても〝著者不詳〟ってペンネームで、本を出版できるのでしょうか?
書店とかの登録や検索でエラーが起こりそうですが……。

あらためて相談してみると、なかなか難しい様子でした。

そうですよね、扱いに困りますよね……ええ、なんとなく想像できます。
それで、〝著者不詳〟はいけません? そこをなんとか~っ、怒られるギリギリのラインを攻めたいんです、お願いします!!

と、こんなかんじで、だいぶ編集さんを困らせました。

結論から言えば、〝著者不詳〟や〝unknown〟といった名義で出版することは叶いませんでした。
〝著者不詳〟やこれに類する名義は、〈個人の筆名〉なのか、〈本当に著者が誰かわからない状態〉なのか、判断がつかないからです。

私が狙ったのは、まさにその不透明感なのですが、デジタルの発達した現代では、書籍情報の登録や流通で問題があります。

仮に技術的な問題をクリアできたとして、書店員さんが『死に勇』を発注する時に混乱したり、買いにきた方に不便をかけたりするおそれもあります。
現場の方を困らせるのは、本意ではありません。

〝長斜歩祥(著者不詳)〟〝奈南氏(名無し)〟みたいな当て字も考えましたが、これはそういうペンネームの作者が「いる」状態にすぎません。
大切なのは、〈著者がいない〉もしくは〈特定できない〉状態です。

いろいろ試しましたが、商品として流通する以上、そうした名義を名乗るのは困難と判断し、本来の〝近江泉美〟名義で刊行する運びとなりました。

一方で、

やっぱりこの作品に作者はいらない、と思うのです。


まだ言うか! とあきれられそうですが、この気持ちは今も変わりません。
『死に勇』の魅力を最大限に発揮するには、物語の外の存在は必要ありません。

このむちゃくちゃを成立させてくれたのが、カクヨム連載でした。
「ウェブ連載なら著者不明でもいいよ」と編集さんに言ってもらえたのです。

そして公式連載で〝著者不詳〟というのもおかしいので、どうにか特定を避ける方法はないかと試行錯誤した結果、いまの名義に落ちつきました。

ウェブ版と書籍版で筆名を変えるという措置は、こうした経緯で発生したのでした。

     *

なぜ『死に勇』から作者の存在を消したかったのか。

どうしてそんなにこだわったのか。

その真価は、物語を最後まで読んでいただいたときに伝わる――そう信じています。


読み終わったとき、笑って泣いて驚ける。
あなたにとって、そんな作品になっていたら嬉しいです!

     *

最後に、担当くださったふたりの編集者さんに感謝を!
初めましてのごあいさつからの、むちゃぶりで、だいぶ困らせたなと自覚しております。
わかっててやめない、あきらめない! ひどい作家がいたものです。

そんな私に、ふたりの担当さんは投げ出さずに付き合ってくれました。
流通の問題や慣例、たくさんの制約がある中で、おふたりは一度も「できない」とは言いませんでした。
代案やたくさんの試作、ありがとうございます。

なによりも作品をいかに読者さん届けるかに心を砕いてくださったことに、心から感謝します!


* * *


では、トップ画像の答え合わせです!
場所は、夕方の小石川植物園。

じつはあの画像、天地がさかさまです。
正しくは、こう↓



 180度回転すると、こうなるのです。↓


空に見えるのは、池。
よく見ると、水面に葉っぱが浮いています。

風のない、穏やかな夕暮れが見せる、不思議な景色でした。

↓下の画像ほうがわかりやすいかも。



『死に勇』も画像のような、不思議な物語です。

少し日常に疲れたな
スカッとするエンタメ小説が読みたい

そんなかたは、ぜひ。

きっとすてきな風景をお見せできると思います。


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